PCT出願案内

≪特許協力条約(PCT)の特徴・手続・注意点≫

1.PCTによる国際出願の利点

PCTによる国際出願制度を利用すると、
(1)日本国特許庁(受理官庁)に提出した出願が特許を取得したい国(指定国)を含む全てのPCT加盟国における「正規の国内出願」と見なされ、出願日が確保される。
(2)日本国特許庁(受理官庁)に日本語で出願可能。
(3)国際的に統一された出願フォームを利用することが可能。
(4)例えばパリ条約ル-トでの出願に比べて費用が高くなる傾向があるものの、翻訳文作成までの猶予期間として、原則優先日から30ヶ月と長い期間を得ることが可能。
(5)上記30ヶ月の期間内に、最終的に国内移行する国を決定すればよい。
などの利点がある。

 ※「優先日」とは、期間の計算上、次の日をいう。
(a)国際出願が優先権の主張を伴う場合には、その優先権の主張の基礎となる出願の日
(b)国際出願が2以上の優先権の主張を伴う場合には、それらの優先権の主張の基礎となる出願のうち最先のものの日
(c)国際出願が優先権の主張を伴わない場合には、その出願の国際出願日


2.締約国

(1)米国(US)、カナダ(CA)、英国(GB)、フランス(FR)、ドイツ(DE)、ロシア(RU)、イタリア(IT)、スペイン(ES)、中国(CN)、韓国(KR)、日本(JP)、タイ(TH)など、142国が締約国である(2010年1月現在)。
(2)非締約国としては、台湾、ブルネイ、アルゼンチン、ボリビア、パナマ、ウルグアイ、モーリシャスなどが挙げられる(2010年1月現在)。
(3)広域特許(EP等)をPCT出願において指定することも可能である。逆にベルギー(BE)、イタリア(IT)、フランス(FR)、ギリシャ(GR)、モナコ(MC)、オランダ(NL)、アイルランド(IE)、スロベニア(SI)、キプロス(CY)は、EP経由でのみ特許取得が可能であるので注意を要する(2009年4月1日現在)。


3.国際出願

(1)国際出願は、日本国特許庁(受理官庁)に提出して行う。その際、願書、明細書、請求の範囲、必要な図面、要約を提出する必要がある。また、国際出願は、所定の言語、所定の様式上の要件、所定の発明の単一性の要件、所定の手数料の支払いの条件に従う必要がある。
(2)先の国内出願に基づいて優先権主張する場合は、優先期間内(先の出願から1年以内)に国際出願をする必要がある。しかしながら、例えば受理官庁が日本特許庁の場合、優先期間の末日が受理官庁の閉庁日(土日、祝日、年末年始)に当たるときは、その日の翌日をもって優先期間の末日とされる。外国特許庁に国際出願する場合は、日本と異なる祝日があるので注意を要する。


4.みなし全指定

(1)国際出願では、原則的に全ての指定国を指定したとみなされるので、国際出願に関する国際段階で行われた手続の効果は原則として全てのPCT加盟国に及ぶ。
(2)先の国内出願に基づいて優先権主張する場合は、所謂「自己指定」となる。「自己指定」をした結果、日本の特許法に基づいて先の国内出願が取り下げ擬制されるのを避けるため、日本国の指定を除外することができる。また、「自己指定」に係る国際出願の審査請求料は、通常の国内出願と比較して減額される利点がある。


5.国際調査

国際出願日が認定されると、国際出願は国際調査機関による国際調査に付される。国際調査により、出願人は国際調査報告というレポートを入手できる。国際調査報告には、「関連すると認められる文献」として、先行技術文献がリストアップされ、出願に係る発明との関連性が記号で表される。


6.国際調査機関の書面による見解

国際調査報告とは別に、国際調査機関の書面による見解(国際調査見解書)が作成される。国際調査見解書には、国際調査報告にリストアップされた先行技術文献をもとに新規性、進歩性、産業上利用性に関する見解、明細書や請求の範囲が所定の要件を満たしているかなどが記載される。
国際調査見解書は、後述の国際予備審査の請求がされた場合には、原則として国際予備審査機関の最初の見解書とみなされる。
後述の国際予備審査報告が作成されない場合には、特許性に関する国際予備報告(特許協力条約第一章)と表題が付され、出願人に送付されるとともに指定官庁に送達される。


7.19条補正

国際調査報告送付の日から2ヶ月または、優先日から16ヶ月のいずれか遅い方の期間内に、PCT19条による請求の範囲に対する補正を一回のみ行うことができる。
国際段階で出願内容を補正しておくことで、各国における手続を一度に完了させることができ、労力を低減することができる。


8.34条補正

後述の国際予備審査請求を行うとき、または国際予備審査報告が作成されるまでの間に、PCT34条による請求の範囲、明細書、図面に対する補正を行うことができる。これにより、国際予備審査における見解の内容を考慮した内容について国際予備審査報告を得ることができる。


9.国際予備審査

出願人は、国際調査報告送付の日から3ヶ月または、優先日から22ヶ月のいずれか遅い方の期間内に、国際予備審査請求を行うことができる。この国際予備審査請求により、国際出願に対する国際予備審査が行われる。
国際予備審査は、請求の範囲に記載されている発明が新規性、進歩性、産業上の利用可能性を有すると認められるか否かについて、予備的かつ拘束力のない見解を示す。
国際予備審査により、国際予備審査報告が作成される。国際予備審査報告は、国際予備報告(特許協力条約第二章)と表題が付され、出願人に送付されるとともに選択官庁に送達される。


10.国際公開

優先日から18ヶ月経過後に明細書、請求の範囲その他を公報に掲載することにより、国際出願の内容が公開される。パンフレット形式で要約、明細書、請求の範囲、図面、国際調査報告(作成しない旨の宣言)、19条補正の説明書、規格による表示などが公開される。


11.国内移行手続

出願人は、優先日から30ヶ月以内(EP、韓国は31ヶ月など例外あり。20ヶ月としている締約国もあるので要注意。)に国内移行手続を行う必要がある。
国内移行手続においては、国際出願の写し、翻訳文の提出、手数料の支払いなどが必要。上記期間内に国内移行手続が行われない場合、国際出願日認定の効果が消滅し、指定国において取り下げられたものとみなされる。

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