トップ  »  Ⅵ 究極の特許法入門  »  第1章 新規性編(特許の要件1)

第1章 新規性編(特許の要件1)

≪ 新規性の概念 ≫

カレン「おじさんおはよう。」

老先生「おじさんはやめなさい。これでも私はここでは先生なんだから。」

カレン「わかりました先生。T君・・・じゃない、若先生は?」

老先生「奥でおてんば娘をお待ちかねだよ。」

カレン「ムカッ!

若先生おはよう。」

若先生「よっ、久しぶり。特許の勉強をしたいんだって?感心、感心」 

カレン「こちらは同級生の秀才君。すっごい発明家なのよ。」

秀才君「よろしくお願いします。」

老先生「あいさつはこれ位にして、本題に入ろうか。どんなものを考えたのかな?」

秀才君「これなんですが、リンゴ皮むき機なんです。ここにリンゴを置いて上のハンドルを回し、リンゴ
     を曲がった刃に当てて固定します。そして、こうすると、簡単に皮をむくことができるんです。」

老先生「なるほど、これは便利じゃな。」

カレン「便利でしょ、先生これを特許にしてもらえません?」

老先生「ちょっと待て、これコンクールに応募して展示されてしまったんだろ。それは何時のことじゃ
     な?」

秀才君「ちょうど1年前です。」

老先生「だとすると、今から特許は無理だな。」

カレン「何で? このように雑誌にも紹介されているのよ!」

老先生「それがいけないんだよ。」

カレン「えッ!」

老先生「つまりだな、特許出願する前に発表したり、雑誌に載せたりすると、新規性がなくなってしま
     うんじゃ。」

カレン「なにそれ?」

老先生「新規性というのはだなあ、簡単に言うと、そのアイデアが一般に知られていない、つまり秘密
     の状態にあるということで、特許を取る上で一番大事なことで、基本中の基本なんだな。
     じゃあ若先生、この新規性について説明してあげなさい。」

若先生「了解!特許についての色々な取り決めは、特許法という法律に規定されています。その特
     許法においては、次のような場合には秘密の状態ではなくなる、つまり、新規性が失われる
     としています。

  (1)特許出願する前に、一般に知られていた発明(公知)
  (2)特許出願する前に、一般に実施されていた発明(公用) 
  (3)特許出願する前に、雑誌や書物に掲載されたり、インターネットのWebページ上に公開され
     ていた発明(刊行物等記載)」

≪ 公知 ≫

秀才君「僕の発明はどれに当たるのですか?」

若先生「君の場合は(1)の公知と(3)の刊行物記載に該当します。

『公知の発明』をもっと分かりやすく説明すると、例えば、昔から知れている技術がこれに該当します。」

カレン「何で公知の発明は特許にならないの」

若先生「それは、特許になるとどういうことになるのかを考えると分かると思うよ。詳しくはまた後で説
     明するけど、要するに、ある発明について誰かが特許を取ると、他の人はその発明を使うこと
     ができなくなってしまうんだ。ところが、昔から知られている技術について誰かが特許を取っ
     てしまったらどうなると思う? 困りはしないかい。」

カレン「それは困りますよ。今まで使えていたものが急に使えなくなってしまうんでしょう。」

若先生「その通りだ。今日は分かりがいいじゃないか。また、出願前から知られているということは、
     出願前にすでに誰かが発明していたということだから、後から発明した人が権利を取得して
     独占してしまうというのもおかしな話だろ。
     ただし、後でまた詳しく話すけど、ほとんどの国は、先願主義といって、何時発明したかは問
     題とせずに、最先に出願した人に特許を求める制度を採用しているんだよ。」

≪ 公用 ≫

カレン「(2)の公用というのは?」

若先生「それは発明を人前で実施することで、例えば、噴水についての発明があるときに、その噴水
     が公園に設置されているような場合だな。公然実施ともいうよ。」

カレン「これも公知の場合と同じ理由?」

若先生「大体同じと考えていいよ。もっとも、公然実施されると公知ということになるな。」

≪ 新規性喪失の例外 ≫

カレン「博覧会などに出品してしまうと全部特許が取れなくなってしまうの?」

若先生「いい質問だ。実は、新規性を喪失しても、喪失しなかったとみなされる場合があるんだ。展示
     会に出品した場合とか、業界紙などの刊行物に掲載した場合とかなんだけど、詳しいことは
     また後日説明するけど、これはあくまで例外なので、新規性を喪失する前に出願するのが原
     則であることを忘れないように!」

秀才君、カレン「はい!」

つづく

このページの先頭へ

crema design menu