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第2章 進歩性編(特許の要件2)

老先生「新規性の関門をクリアしたとして、次なる関門は進歩性です。」    

カレン「え! まだ関門があるの?」

老先生「そう、最大の難関があるんですよ。」

カレン「なんか疲れそう」

老先生「疲れはしないけど、この進歩性というのはだな、要するに、従来知られている技術から見て
     容易に発明できたのかどうかという問題だ。容易に発明できたと考えられる場合は、進歩性
     なしとして、特許が認められないことになる。実は、特許出願して特許が認められない場合の
     多くが、この進歩性がないことが理由なんじゃよ。」

秀才君「容易かどうかはどのようにして決めるんですか?」

老先生「それは非常に難しい問題なんだな。技術分野ごとにある程度の基準はあるんじゃが、実際
     はケースバイケースで、いかに審査官を説得するかが我々の腕の見せ所というわけだ。
     若先生、何か例を挙げて説明してあげなさい。」

若先生「そうだね。例えば、A部品とB部品とをねじ止めするという発明があった場合に、A部品とB部
     品とを接着するという考えは、まず進歩性なしとされるだろうな。接着によって2部品を固定す
     ることは一般に知られているから、ねじ止めに代えて接着するということは容易に考え付くと
     判断されるだろうね。また、A部品とB部品を完全に固定しないで、永久磁石で固定すること
     で、A部品をB部品から取り外しできるようにすることは、ケースバイケースだけど、一般には
     進歩性なしとされるんだろうな。」

カレン「その磁石の場合、どういう場合だったら進歩性ありとなるの?」

若先生「それは、例えば、その業界の人、つまり、それが自動車に関係する発明の場合は、自動車
     業界で設計に携わる人が、『なるほど、うまく考えたな』、と思えるアイデアであれば進歩性
     ありとされるのではないかな。」

カレン「ふーん。」

秀才君「僕の考えたリンゴ皮むき機はどうなんでしょうか。」

若先生「その判断をするに当たっては、先ず、その分野、つまり、野菜加工機械分野の特許調査をす
     る必要があります。」

カレン「デパートとかいろいろ見て回ったけど、どこにも売ってなかったわ。だから誰かが特許出願して
    いることはないと思うけど?」

若先生「特許出願しても、商品化するとは限らないんだよ。」

カレン「あら、そうなの。」

若先生「特許出願は、実際に物を作らなくても、考え方を書面にまとめるだけで出すことができるか
     ら、実際に物を作る前に出願することも少なくないんだ。これは、また後で説明するけど、先
     願主義といって、特許は早く出願した者勝ちだから、できるだけ早く出願する必要があること
     にも関係しているんだよ。また、うまくいくと思ってとりあえず特許出願したけど、実際に作っ
     て試してみたら、思っていたような動作をしないので、製品化を断念することも少なくない
     な。」

カレン「よく分かったわ。それで、特許調査はどうやって行うの。」

老先生「それは、私が事務所を開いたころは大変な作業だったんだな。コンピュータなんてなかった
     時代だから、特許庁の資料室とか弁理士会の資料室に行って、分野別につづられている特
     許公報というものを片っ端からめくって調べたもんだ。分野別につづられているからといって、
     ピンポイントに抽出される訳じゃないから、一つの調査に何日もかかることもあったな。
     それが今はどうだ。事務所の机上で、インターネット検索できちゃうんじゃから。それも、誰で
     もどこでも無料でできちゃうんじゃな。だけど、楽になった反面、調査の仕事が減少して調査
     料を頂けなくなっちゃったからなあ。」

若先生「先生、昔話はもういいんじゃないですか。」

老先生「そうじゃな。じゃ電子図書館の話をしてあげなさい。」

若先生「はい。今最も利用されている特許調査のためのデータベースが電子図書館で、特許庁のホ
     ームページから誰でも無料で利用することができます。」

カレン「それって、難しくないの?」

若先生「君たちインターネットを使えるんだろ。だったら簡単、大丈夫だよ。電子図書館を開くと初心者
     コースがあるから、最初はそこから入るといいよ。初心者でも分かるように利用方法を説明し
     てくれるから。ただ、電子図書館による検索方法にもいろいろテクニックがあって、慣れるま
     では、調査漏れも出てくると思うけど、まあ、やってごらん。」

秀才君「早速帰って、挑戦してみます。」

カレン「じゃ、今日はこの辺で失礼します。また、来ますので、続きをお願いしますね。」

老先生、若先生「了解、またおいで!」

(ということで、秀才君とカレンちゃんは、電子図書館を利用しての特許出願の調査に挑戦することになりましたが、この調査方法及び調査結果は、特許法の理解に直接は関係がないので、これ以上の詳細な説明は省略します。)

つづく

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